糖尿病とは
糖尿病とは |
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糖尿病とは、すい臓で作られるインスリンというホルモンの作用不足により、慢性的に高血糖になった状態のことです。インスリンの分泌量の不足や、その働きが悪くなると、栄養分が細胞の中に取り込まれなくなり、血液中にブドウ糖などの量が増えてきます。そして長期間高血糖状態が続くと、腎症や網膜症、神経障害などの合併症が起きる場合があります。
糖尿病の治療の目的は、できるだけ血糖を正常に近い状態に保ち、合併症を防いで健康な人と同様な日常生活を送ることにあります。治療には、食事療法、運動療法、薬物療法がありますが、食事療法は全ての場合の基本となります。 |
自覚症状 |
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多くの場合、自覚症状は少ないです。
糖尿病が長く続くと口が渇く、尿の回数・量が多くなる、水分を多く摂る、空腹感、体重減少、疲れやすい、手足のしびれなど。 |
検査値 |
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血糖値、HbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)、フルクトサミン、グリコアルブミン、1,5アンヒドログルシトール |
種類 |
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・I型糖尿病(インスリン依存型糖尿病)
・II型糖尿病(インスリン非依存型糖尿病)
・栄養障害による糖尿病
・その他の糖尿病 |
薬の種類 |
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①インスリン分泌薬(作用持続型、速効型)
②α‐グルコシダーゼ阻害薬(α‐GI)
③インスリン抵抗性改善薬
④ビグアナイド剤
⑤DPP4阻害薬
⑥GLP-1受容体作動薬
⑦SGLUT2阻害剤
⑧インスリン
㋐超速効型 ㋑速効型 ㋒中間型 ㋓遅効型 ㋔持効型 |
低血糖について |
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血糖降下薬を使用中に食事を摂らなかったり、運動量がいつもより多かったりすると、低血糖という症状がでてきます。
冷や汗、不安、動悸、手の振え、空腹感などが出現します.過度に血糖が低下すると、意識レベルの低下、異常行動、けいれんなどを生じることもありますが、頻度は多くはありません。 |
低血糖の対処法 |
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治療は、糖分を摂取することです。一番早くに血糖を上昇させるのはブドウ糖ですが、砂糖や飴、ジュースなどの摂取でもかまいません。α-グルコシダーゼ阻害薬を飲んでいる患者さんは、必ずブドウ糖を摂って下さい.また、意識障害によってそれらのものを自分で口に出来ない場合は、病院で注射によるブドウ糖の投与が必要です。 |
血糖コントロールの指標と評価
血糖値
血液中のブドウ糖の濃度をあらわします。
HbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)
赤血球の中にあるヘモグロビン(血色素)のうち、ブドウ糖と結合しているものの割合をパーセントで表したものです。血糖値が採血時点での指標であるのに対し、採血前1~2ヶ月間の平均血糖値を反映し、血糖コントロール状態の指標となります。最近はコントロールの良否の判断にはヘモグロビンA1cを用いることが多くなっています。
糖尿病の三大合併症(慢性疾患)
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特徴 |
網膜症 |
失明原因の第一位。
急激な血糖値の変化は網膜症を悪化させる。 |
腎症 |
透析導入原因の第一位。
併用薬の種類、服用量は注意を要する。 |
神経障害 |
両足のしびれ、疼痛などの多発性神経障害や自覚のない低血糖、立ちくらみ、心筋虚血などの自立神経障害が発症する。
血糖のコントロールを維持することで改善する。 |
糖尿病の分類
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I 型糖尿病(インスリン依存性 |
II 型糖尿病(インスリン非依存性) |
特徴 |
若年者に多い。小児の時の病気や元々インスリンが分泌できない為、インスリンが生活する為には絶対に必要。 |
中高年者に多くなる。肥満やストレスなどが原因となって、インスリンの分泌能が低くなる状態。また、インスリン抵抗性が高くなり、インスリンの効果が弱まった状態。 |
肥満度 |
肥満と無関係 |
肥満または肥満していた事と関係が深い |
治療 指針 |
第1選択:インスリン注射 +
食事、運動療法
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第1選択:運動、食事療法 →
糖尿病薬の使用
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治療
1. 食事療法
2. 軽めの運動
3. 薬の服用
4. インスリン注射
5. その他の注射薬
1. 食事療法は糖尿病の治療の第一の改善策になっています。
・腹七分目の食事内容に
・いろいろな種類の栄養素(糖質、脂質、たんぱく質、食物繊維など)をパランスよく摂る
・脂肪は控える
・食物繊維を多く含む食物を食べ始めにすると血糖上昇が緩やかとなる
・ゆっくりよく噛んで食べる(一口に約50回の咀嚼をめざす)
・GI(グリセリックインデックス)の低い食品を食べる
2. 軽めの運動を継続する事で血糖値のコントロールが改善されます。
運動不足ではインスリン非依存性糖尿病を起こすきっかけにもなります。また、運動する事でインスリン抵抗性が改善され、ブドウ糖を効率よく利用される事にもつながります。
・最初にどの程度の運動療法が必要かを医師に確認
・毎日、一定の時間運動する事が大切です。歩く事は体の負担が少なく、とりかかりやすい方法の一つです。大体、20~30分の散歩を続けるとよいでしょう(ニコニコペースで)
・有酸素運動と無酸素運動を適度に折りいれていくとより、効果的です
・朝食前の運動は低血糖になりやすいので注意が必要です
3. 糖尿病のための経口薬
・インスリン分泌薬
すい臓からインスリンの分泌を促進します。2型糖尿病になると、すい臓からのインスリン分泌量が少なくなります。よって、血糖が高くなるため、インスリン分泌薬により不足したインスリンの量を補うのです。作用持続型は空腹時高血糖を是正しますが、低血糖が起こりやすいので注意が必要です。速効型は自然のインスリン分泌パターンをモデルとしています。食後血糖値が高い場合の早めの治療で使用される事が多々あります。いずれにしても、低血糖を起こす事がありますので、シックデイや食事をしない場合には薬の服用は見合わせましょう
・α‐グルコシダーゼ阻害薬
は食事から得られるでんぷん、砂糖などが分解してブドウ糖となり、吸収されるのを抑制します。つまり、ブドウ糖へ分解される経路を阻害し、血糖が上昇する事を抑制します。α-グルコシダーゼ阻害薬を用いている方が低血糖の状態になった場合には砂糖ではなく、ブドウ糖を摂らなければ症状は改善しないので注意が必要です
・インスリン抵抗性改善薬
肥満などが誘因となるインスリンが細胞への取り込 みが低下します。その結果、血糖が高い状態で続いてしまいます。そういった状態はインスリン抵抗性が増しているので改善しなければインスリン分泌薬を使用していても効果が弱まります。インスリン抵抗性改善薬を用いてインスリンの効果を高め、血糖を低下させます
・ビグアナイド剤
インスリンか抵抗性改善作用と肝臓での糖放出抑制、消化管らの糖吸収抑制により血糖を低下させます。この類は肥満を助長しないので肥満を伴う糖尿病患者にしようされます
・ DPP4阻害薬
血糖を一定に保つ働きをするインクレチンを分解する酵素を阻害することにより、血糖が高い時にインスリン分泌促進作用並びにグルカゴン濃度低下作用を増強し血糖コントロールを改善します。
食事をしたときに腸管から分泌される「インクレチン」というホルモンの分解を抑制することにより、血糖値をコントロールする新しい機序の薬剤です。インクレチンは膵臓のβ細胞からのインスリン分泌を促進することとグルカゴンの分泌抑制により血糖値を低下させます。
・SGLUT2阻害薬
血中の糖をおしっこから出す新しいタイプのお薬です。そのため、脱水症状を起こすことがあるので、適度に水分補給をしましょう。単独で使った場合、低血糖になりにくいとされています。
4. インスリンの注射
できるだけ、自然のインスリン分泌パターンになる様に種類を選択されます。最近のインスリン製剤はその作用が発現する時間と作用が続く時間のパターンから以下のような分類になります
・超速効型
透明のインスリン製剤で従来のインスリン製剤に比べ、皮下注射すた後、10~20分で効果が現れてきます。今までの速攻型と比べ、食事30分前に注射をしなくてもいいので注射の打ち忘れなどが少なくなっています。持続時間が短い為、低血糖に陥る可能性は低い製剤です
・速効型
透明のインスリン製剤です。食事30分前に注射をしないと効果的にインスリンが働きません
・準速効型
速効型インスリンより若干作用時間が長い事が特徴です。ブタ由来のインスリンで最近はあまり使われていません
・中間型
白く濁ったインスリンで、作用持続時間は12~24時間程度です
・混合型
速効型や超速攻型と中間型インスリンが混合されています。持続時間は約24時間で、1日2回使われる事が多い製剤です
・持続型
1日1回注射をするタイプで基礎インスリンを補うために使用されます
○インスリンの注射は
①カートリッジを携帯用注入器にセットするカートタイプと
②インスリン製剤と注入器がセットされているキットタイプがあります
○インスリンの使用方法は必ず医師、薬剤師、看護師などに確認した上で使用してください
○保管方法は原則冷暗所(冷蔵庫のポケットコーナーなど)です。
凍らせると正しい値のインスリン量が注入できなくなる可能性があるので、注意が必要です。
インスリン製剤を使用し始めたら室温で保管しましょう。
5. 注射薬(GLP-1受容体作動薬)
GLP-1というホルモンの働きを補う注射薬です。DPP-4阻害薬と同様に、膵臓のβ細胞からのインスリン分泌を促進し、グルカゴン分泌を抑制して血糖値を低下させる他、食欲を抑える作用もあると言われています。