1.帯状疱疹とは
帯状疱疹は、水痘罹患後または水痘ワクチンの接種後に、三叉神経節あるいは脊椎後根神経節(知覚神経節)に潜伏感染していた水痘−帯状疱疹ウイルス(varicella-zoster virus:VZV)の再活性化により発症(回帰発症)するウイルス性皮膚疾患である。通常では生涯に1度しか罹患しないが、約1.7%の患者では2回以上発症することがある。その多くは基礎疾患を有する患者である。
2.帯状疱疹の症状
臨床症状は、脊髄分節に一致した帯状に分布する水疱の集簇と疼痛と知覚異常を主要とする。皮疹が発症する前に前駆症状として、しばしば片側の神経分布領域に神経痛や知覚異常が出現する。前駆症状の長いものでは2週間以上も続く場合もある。この時期には片頭痛、三叉神経痛、肋間神経痛などとの鑑別が必要となる。約4〜5日後、同部位に浮腫性紅斑が出現し、水疱、膿疱、痂皮と変化し色素沈着、時に瘢痕を残して自然経過では若年者で約2週間、高齢者では3〜4週間程度で治癒する。多くの症例では所属リンパ節の有痛性腫脹を認めるが、全身症状を伴うことは少なく、皮疹出現後4〜5日後に神経支配領域以外の部位に散在性に水疱がみられることがあり、この皮疹を汎発疹と呼ぶ。この場合はウイルス血症を起こしており、免疫不全の状態では汎発疹の個数は多くなる傾向にある。
3.診断
診断は特徴的な皮疹と分布などから一般に容易であるが、疼痛のみで皮膚病変がみられない時点での診断の確定は非常に困難であり、帯状に配列した紅斑、小水疱の出現をまって診断する。
4.治療
治療方針としては、可能な限り早期に十分量の抗ウイルス薬を投与し、皮膚病変を速やかに軽快させ瘢痕を残存させないこと、および疼痛を軽減し帯状疱疹後神経痛をなるべく残さないことを目標とする。発症(皮膚病変の出現)から抗ウイルス薬の投与までの期間が短ければ短いほど、ウイルスの増殖量を抑えると想定され、皮膚および神経組織の損傷の程度も軽いと考えられるので、病初期に受診した場合は速やかに診断を確定し、積極的に抗ウイルス薬の全身投与を行う。抗ウイルス薬の全身投与を皮膚病変の出現後72時間以内、理想的には48時間以内に開始すると有意に皮膚病変の拡大が阻止され、早期に治癒し、急性期の疼痛が軽減し帯状疱疹後神経痛の残存が少ないことが判明している。
疼痛に関してはアセトアミノフェンを主体に投与し、ジクロフェナクナトリウムは、脳症など重大な副作用を起こすことがあるので投与しない。またロキソプロフェンナトリウムとバラシクロビルとの併用は、腎血流量の減少から急性腎不全を起こすことがあるため併用は避けたほうがよい。疼痛の訴えが著しい症例や高齢者で、皮膚病変が著しい症例や高齢者、皮膚病変が重症あるいはアロディニアなどの神経因性疼痛の症状がある場合などの、帯状疱疹後神経痛への移行に関わるリスクファクターを有する症例では、初期から疼痛対策を行うことが、帯状疱疹後神経痛の合併の予防につながると考えられる。そのため、各種の非ステロイド抗炎症薬の内服に加え、副腎皮質ステロイド、リン酸コデイン、三環系抗うつ薬などの内服や、神経ブロックなどを、積極的に抗ウイルス薬と併用する。