パーキンソン病 


第20回目はパーキンソン病です。
 
パーキンソン病 (parkinson desease)
 
 
パーキンソン病とは 中高年齢者に発生する神経変性疾患で 1000人に1人の割合ですが 高齢者の占める割合が高く 下記の4大症状が特徴的です
 
安静時振戦
手や足やあごにおこり 左右どちらかが強い
 
安静時におこり 動作時には消失又は軽い
 
最初に発症する症状であることが多い(⇒丸薬まるめ運動)
固縮
手足の動きがぎこちない
 
患者自身よりも医師などが手足の関節を屈伸すると 抵抗として感じる
 
(⇒歯車現象)
無動
動作が遅く 鈍くなる
 
家族から見てもわかりやすい(⇒仮面様顔貌・小字症・構音障害)
姿勢反射障害
病状が進行すると姿勢の反射が鈍くなり 体のバランスが崩れやすい
 
(⇒前屈・小刻み歩行 加速・突進現象 すくみ足)
 
 
パーキンソン病の発生機序 
 
通常脳内の神経細胞は2つの神経伝達物質のバランスで活動しています
 
パーキンソン病を発症すると 黒質と呼ばれる部分のドーパミン神経細胞が変性脱落し その神経の終末のある線条体という部分でドーパミンが低下します 結果としてアセチルコリンが優位になってしまい症状が出現します
 
(黒質はメラニン色素多量に持つ神経細胞の集合体で そのため肉眼で黒く見える しかし変性すると褪色し茶褐色に見える)
 
進行するとドーパミンからノルエピネフリンにする酵素も低下しそれによる症状も出現します
 
 
パーキンソン病と似たほかの疾患
 
①    脳血管障害性のもの
 
脳梗塞や脳出血の後遺症でも似た症状が見られるので医師の診察が必要です
 
ラクナ梗塞 :大脳基底核で多発した小梗塞がみられる
 
ビンスワンガー型白質脳症 :小梗塞と虚血性の白質変性がみられる
 
が代表的な疾患です
 
CTやMRIで特徴がみられます
 
②    薬剤性のもの
 
一部の向精神病薬、 制吐や消化管運動改善にも使用される一部の抗うつ薬でも
 
似た症状が出ることがあります
 
左右差がないのが特徴です L-ドーパは効きません
 
③    パーキンソン病以外の 脳変性疾患
 
進行性核上性麻痺
 
大脳皮質基底核変性症
 
レビー小体型認知症 などなど
 
似た症状を示すので医師に判別してもらいます
 
 
 
これら①~③は症状が似ていても治療が異なるのでパーキンソン症候群と呼んでいます
 
 
パーキンソン病の治療
 
パーキンソン病の治療は 各種の症状を改善することで進行を遅らせ 生活の質を維持することが目的です
 
方法としては
 
              黒質-線条体で不足しているドーパミンを補充する
 
               ドーパミンの不足のために 線条体で優位になっているアセチルコリンの作用を抑制する 
 
① L-ドーパ製剤

      L-ドーパ単独
 
    L-ドーパと末梢性ドーパ脱炭素酵素阻害の合剤
脳内で不足しているドーパミンの前駆物質のL-ドーパを補充 脱炭素酵素(DCI) はL-ドーパの代謝を阻害する
② ドーパミン受容体刺激薬 ドーパミン受容体を直接刺激する
③ ドーパミン遊離促進薬 ドーパミンの遊離を促進する
④ MAO-B阻害薬 ドーパミンを分解するモノアミン酸化酵素Bを阻害する
⑤ 抗コリン薬 優位になっているアセチルコリン受容体を遮断する
⑥ ノルエピネフリン前駆物質 ノルエピネフリンはドーパミンから合成される 脳内で不足しているノルエピネフリンを補充する
⑦ COMT阻害薬 L-ドーパの代謝を阻害する
 

①    L-ドーパ製剤             
       
        ドパストン・ドパール・ドパゾール                                               

悪心・嘔吐のSE
 
 
食後・食直後でSE軽減
                                                                            
                                                                                       
        L-ドーパ+DCI                                                                                                     
 
        イーシードパール・ネオドパゾール・マドパー
 
突発的傾眠のSEあり 一部の緑内障の患者に禁 
 
ネオドパストン・メネシット
 
L-ドーパ長期使用による問題 
 
 
 
悪心・嘔吐のSE
 
 
食後・食直後でSE軽減
 
②ドーパミン受容体刺激薬:ドーパミンアゴニスト

麦角系 カバサール
          
ペルマックス
          
パーロデル

 
 突発的傾眠のSE
 
非麦角系 ドミン
 
            ビシフロール 
 
 
カバサール・パーロデルには乳汁漏出症・高プロラクチン血性排卵障害の適応あり
 
 
口渇・便秘等のSE

③    ドーパミン遊離促進薬
 
       シンメトレル
 
脳梗塞後遺症後の意欲低下・A型インフルエンザの適応症あり
 
 
単独使用不可
 
⇓ 
 
L-ドーパとの併用

④    モノアミン酸化酵素B(MAOB)阻害薬

        エフピー
  
悪心・嘔吐のSEあり 一部の抗うつ剤との併用禁 取り扱い注意 併用薬によっては食事に注意必要
 
 
 
緑内障・重症筋無力症患者に禁
 
悪心・嘔吐のSEあり
 
⑤    抗コリン薬 
 
アキネトン
 
タスモリン
 
アーテン
 
一部の緑内障の患者に禁 すくみ足改善

⑥    ノルエピネフリン前駆物質
 
   ドプス
 
悪心・嘔吐のSE 透析患者の起立性低血圧の適応あり
 
 
⑦    COMT阻害薬 
   
 
L-ドーパ長期使用時の日内変動に有効
 
 
⑧    パーキンソン病には外科治療もありますが 根本治療ではないのであくまでも
 
2次的手段であり Drと充分に相談が必要です
 
パーキンソン病の日内変動
 
 進行期パーキンソン病の患者はすでにL-ドーパが長期に使用されているため
 
長期使用による問題が発生しています 日内変動には下の①~⑤があり、個々の状態により対応します
 
 
①     wearing off
 
L-ドーパの薬効時間が短縮し服用後数時間で効果が消失する またそれを患者も自覚する
 
 
②     on-off現象
 
L-ドーパの服用時間に関係なく症状が突然良くなったり(on)突然悪くなったり(off)する 1日に何回も繰り返すことがあり 多くはonの時ジスキネジーを伴う
 
 
③     No-on現象
 
L-ドーパを服用しても効果発現がみられない
 
 
④     Delayed on現象
 
効果発現に時間がかかる現象
 
 
⑤     効果減弱
 
 
パーキンソン病のそれ以外の問題
 
①     ジスキネジー・ジストニーの発現
 
 
ジスキネジー:手、足、舌などが自分の意思に関係なく勝手に動く現象
 
  ジストニー:足の指が曲がったり、顔や首に強いこわばりが出る現象
 
特にジストニーでは痛みを伴うことも多く、自分の意思で元に戻すことは難しいため苦痛である
 
 
②     すくみ現象
 
すくみ言語、手のすくみなどがありますが 代表的なのがすくみ足です
 
on時とoff時で対応が異なります
 
 
すくみ足:歩行開始時や方向転換時など何かのきっかけで起こる
 
視覚のキュー:床にテープを貼る
 
聴覚のキュー:声かけ・リズムを取るなど
 
 
③     精神症状
 
幻覚・妄想や 興奮・錯乱 うつ状態などの精神症状がでることもあります
 
うつ状態を合併している事もありますし 使用する薬によってもおこる事があります
 
 
睡眠障害へGO
 
 
④     睡眠障害・覚醒障害
 
睡眠不足は翌日の症状に影響します
 
 
日中突然眠くなる突発的傾眠などを覚醒障害といい 薬に起因するものもあり注意が必要です
 
 
⑤     他に起立性低血圧や排尿障害 消化管運動障害・イレウスが見られることもあります
 
 
⑥     悪性症候群の出現
 
悪性症候群は高熱・錐体外路症状・意識障害などが出現する重篤な症状です
 
パーキンソン病の患者で起こる場合には 基本的には治療薬の突然の中止で起こりますが 脱水症状 発熱 過激な運動なども引き金になることもあり 普段から注意が必要です
 
 
以上がパーキンソン病についてですが
 
パーキンソン病は 病状をコントロールし他の病気にも注意すれば 社会生活にも参加できる疾患です
 
お医者様とよく相談して薬を自分で判断することなくきっちり服用しましょう
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