ヘルパンギーナとはどんな感染症か
毎年7月ごろをピークとして5~9月に流行します。4歳以下の小児、とくに1歳代に流行することが多い夏かぜの一種です。高熱と口腔内の発疹(のどの奥に紅暈(こううん)で囲まれた小水疱(しょうすいほう)が現れる)が特徴的です。
原因ウイルスは多種類ありますが、多くは腸管ウイルスであるコクサッキーAウイルス(CA)、とくに4、6、10型が多いといわれています。そのほか、CA2、3、5、8、16型、コクサッキーBウイルス、エコーウイルスの感染によるものもあります。このように原因ウイルスが多数あるので、何度もかかることがあります。
感染経路について
感染経路は咽頭分泌物に含まれるウイルスの飛沫感染(空気感染)か、便に排泄されたウイルスの経口感染です。感染力が最も強いのは急性期ですが、回復後も長期(2~4週)にわたり便からウイルスが排出され、感染源となることがあります。
症状の現れ方
2~4日の潜伏期ののち、突然39度前後の高熱が出て、口蓋垂(こうがいすい)(のどちんこ)の上周辺に紅暈を伴った多数の小水疱が認められます。水疱が破れたり潰瘍ができると喉がしみて唾液を飲み込むのもつらくなります。幼小児では痛みのために水分摂取が不足し、高熱とも相まって脱水症状を起こすことがよくありますので注意が必要です。
発熱に伴って熱性けいれんを合併することもありますが、一般的に数日の経過で回復し、予後は良好です。まれに無菌性髄膜炎(むきんせいずいまくえん)や心筋炎を合併することがあります。
検査と診断
高熱と特徴的な口腔内の症状から、ほとんどが臨床的に診断されます。原因ウイルスを特定するには、患者さんの咽頭ぬぐい液、糞便などからウイルスを直接分離することが最も有効です。最近ではRT‐PCR法を用いてウイルス遺伝子(RNA)の検出を行うこともあります。
区別すべき病気として、手足口病(てあしくちびょう)、単純ヘルペスウイルスによる口内炎、アフタ性口内炎などがありますが、その他の症状なども考慮すれば、臨床症状から診断される場合がほとんどです。
治療の方法
原因ウイルスに対する特効薬はありません。症状をやわらげる対症療法が中心となります。予防ワクチンはありません。飲食ができなくなったり脱水症を併発した場合は、輸液(点滴)を必要とする場合があります。水分は少しずつこまめに補給しましょう。
ヘルパンギーナに気づいたら
高熱が出て経口摂取が十分できなくなる場合も多いため、早めにかかりつけの小児科を受診してください。流行時には、うがい、手洗いの励行、患者さんとの接触を避けることなどが予防につながります。
患者さんは便中に1カ月近くウイルスを排泄していることが多いため、排便あるいはおむつ交換後の手洗いを徹底します。学校、幼稚園、保育所などでは登校・登園停止の疾患にはなっていませんが、その症状から、急性期は自宅での安静が必要です。