尿もれとは

 

尿がもれることを、医学的には尿失禁といいます。その程度や原因はさまざまです。尿失禁のなかで最も多いものは、重い
荷物を持ったり、かがんだり、咳やくしゃみをしたときに下着が少し濡れてしまったなど、女性が腹部に力を入れたときに起
こる尿もれ(尿失禁)です。


尿失禁は、生命にかかわるような病気ではないこともあり、ともすると、ないがしろにされがちでした。また、ほとんどの女性
が「尿をもらす」ことを「恥ずかしい」と感じてしまうこともあり、誰にも相談できずにひとりで悩んでいるケースが多いようです。

尿失禁にはじめて気づくのは30~40歳代が最も多いといわれています。これは、尿失禁が出産と深い関係にあるからです。
出産が原因の尿失禁は、出産後、半年から1年で自然に治りますが、骨盤底筋群が緩んだままになっていると、歳をとって
から尿失禁が起こりやすくなります。産後1年くらいは骨盤底筋群運動を行って、予防を心がけましょう。

尿は、尿管を通って膀胱に一時的に溜められます。膀胱内の尿量が一定量を超えると尿意を感じますが、尿意を感じたから
といって、自動的に排尿が起こるわけではありません。ふつう、「トイレに行きたい」と感じてから、ある程度の時間はがまん
できますし、逆に尿意を感じなくても、必要と感じれば排尿することができます。これは、排尿が脳によってコントロールを受
けているためです。

尿を溜めたいとき、膀胱をゆるめ尿道をしめることを蓄尿といい、逆に尿を出したいとき膀胱を収縮させ尿道をゆるめることを
排尿といいます。排尿は、排尿筋、膀胱括約筋(内括約筋)、外尿道括約筋(外括約筋)が、それぞれ収縮・弛緩することで
調整されています。排尿筋と膀胱括約筋は、自律神経によって支配される不随意筋で、膀胱内圧が上昇すると反射的に排
尿を促します。ところが、随意筋である外尿道括約筋は陰部神経の支配を受けているため、尿意が起きても自分の意志で
括約筋を収縮して排尿を中断することができます。ただし、内圧が一定を超えると意志の力では排尿を抑えることができなく
なります。乳幼児が尿をもらしてしまうのは、大脳が発達していないためです。排尿の抑制が始まるのは3歳くらいからで、コ
ントロールができるようになるのは4~5歳くらいです。

尿失禁は、自分の意思とは関係なく、時と場所を選ばず、尿がもれてしまう状態で、いくつかのタイプがあります。
女性の尿失禁をタイプ別に見ると、腹部に力が加わったときに尿がもれる「腹圧性尿失禁」が約5割、過活動ぼうこうによる
「切迫性尿失禁」が約2割、両者を併せ持つ「混合性尿失禁」が約3割と、腹圧性尿失禁が多くを占めています。

 

腹圧性尿失禁

 

腹圧性尿失禁の起こり方


女性の骨盤内には、ぼうこうや尿道、子宮や膣(ちつ)、直腸などがあります。これらの臓器は、骨盤の底にあるいくつもの
筋肉や結合組織から成る「骨盤底」に、下から支えられています。骨盤底や尿道括約(かつやく)筋が健康でしっかりして
いる状態では、腹圧がかかったときにも尿がもれることはありません。しかし、女性の尿道には「短くて動きやすい」「後ろ側
に動きやすい膣がある」などの構造的弱点があります。「妊娠・出産」「加齢」「肥満」「呼吸器疾患」などの要因で骨盤底が
ゆるむと、膣が後ろ側に動いて尿道が動きやすくなったり、尿道括約筋が尿道を締める力が弱まったりして、腹圧性尿失禁
が起こります。骨盤底.jpg


治療

腹圧性尿失禁の治療には「骨盤底筋体操」「薬物療法」「手術」があります。せきやくしゃみをした際に尿がもれる程度であれ
ば、骨盤底筋体操を行うようにすればよいでしょう。頻繁に尿がもれて仕事に差し支えたり、旅行など好きなことを楽しむこと
ができない、といった場合には、泌尿器科を受診して相談しましょう。
 

骨盤底筋体操は、肛門や膣の辺りの筋肉を締めたりゆるめたりして、骨盤底の筋肉を強化する体操です。3か月以上毎日続
けます。
薬物療法では、尿道括約筋の収縮を強める「β2刺激薬」が使われます。骨盤底筋体操の効果が現れるまでの間や、高齢
などの理由で手術を希望しない場合に使われます。手術では、メッシュ状のテープを膣から挿入し、尿道の下から下腹部へ
通して尿道を支える方法があります。また、便秘や肥満がある場合は、骨盤底のゆるみの要因となるので、改善するよう
に心がけましょう。

 

切迫性尿失禁

 

切迫性尿失禁は尿意や膀胱に対する刺激に反応して膀胱が収縮し、突然起こったがまんできない尿意によって尿をもらして
しまいます。知覚性と運動性に分けられ、排尿反射神経による抑制を上回る尿意が原因で起こるものを知覚性といい、脳の
排尿神経の異常で排尿が抑制されなくなり、膀胱への軽い刺激で排尿反射が起きてしまうものを運動性といいます。膀胱炎
などで一時的に膀胱が過敏になっている場合や、脳の障害などの場合がこれにあたります。

 

その他の尿失禁

 

 ・溢流性尿失禁

排尿がうまくできなくて、常に膀胱内に尿がたまってしまい、少しずつもれてしまいます。子宮がんや直腸がんなどの手術で
末梢神経が傷つけられて起こる排尿障害や、男性の高齢者に多い前立腺肥大などが原因となります。一刻も早い専門医へ
の受診が必要となります。

・尿道外尿失禁

尿道以外の部位(膣など)から尿がもれるものです。瘻孔(尿道とは別の尿の通り道)が形成されていたり先天的な奇形が原
因で起こります。

・遺尿症(夜尿症)

乳幼児のときに、排尿コントロールがうまくできず夜間に尿をもらすものです。思春期以降にも継続する場合は、なんらかの異
常が疑われますので、精密検査が必要になります。

・機能性尿失禁

痴呆や神経疾患、整形外科的疾患などの為にあるいは尿意をうまく周囲の人に伝えられない為に、起こります。

薬剤師募集 店舗一覧

MENU