腸管出血性大腸菌


病原体

大腸菌は、家畜やヒトの腸内にも存在し、そのほとんどは害がありません。しかし、中にはヒトに下痢などの症状を引き起こす大腸菌があり、病原性大腸菌と呼ばれます。病原性大腸菌は約170種類ありますが、そのうちベロ毒素を産生し、出血を伴う腸炎や溶血性尿毒症症候群(HUS)を起こすものを腸管出血性大腸菌と読んでいます。このベロ毒素が全身の重篤な症状を引き起こします。

 

流行時期

食中毒は一般に、気温が高い初夏から初秋にかけて多発します。この時期は、食中毒菌が増えるのに適した気温であり、これに人の体力の低下や食品などの不衛生な取扱いなどの条件が重なることにより発生しやすくなると考えられます。

 

流行地

全世界で発生しており、北米・欧州など先進国でも、加熱が不十分な肉からの感染例が報告されています。日本においては、焼肉店などの飲食店や、食肉販売業者が提供した食肉を、生や加熱不足で食べて感染する事例が多くなっています。

 

感染経路

飲食物を介する経口感染がほとんどで、菌に汚染された飲食物を摂取するか、患者の糞便で汚染されたものを口にすることで感染します。国内において特定された原因食品等としては井戸水、牛肉、牛レバー刺し、ハンバーグ、牛角切りステーキ、牛タタキ、ローストビーフ、シカ肉、サラダ、貝割れ大根、キャベツ、メロン、白菜漬け、日本そば、シーフードソース、ユッケ、冷やしきゅうり、きゅうりの和えものがあります。O157は感染力が強く、通常の細菌性食中毒では細菌を100万個単位で摂取しないと感染しないのに対し、わずか100個程度の菌数の摂取で発症するといわれています。

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潜伏期間

通常の細菌性食中毒の潜伏期間が数時間から3日程度であるのに対して、病原性大腸菌感染症は4~8日と長いのが特徴です。

 

症状

臨床症状は、無症候性から軽度の下痢、激しい腹痛、頻回の水様便、さらに、著しい血便とともに重篤な合併症を起こし死に至るものまで様々です。多くの場合は、感染して48日間の無症状の期間を経て、激しい腹痛をともなう頻回の水様便の後に血便が出現します(出血性大腸炎)。発熱は軽度です。血便の初期には血液の混入は少量ですが、次第に増加し、やがては血液そのものという状態になります。患者の67%では、発症数日後から2週間以内に、溶血性尿毒症症候群、または脳症などの重症な合併症が発症する場合があります。

 

 

 

治療法

安静、水分の補給、抗菌薬・乳酸菌製剤の投与などです。

 

予防等

腸管出血性大腸菌は75で1分間加熱すれば死滅します。食品は十分に加熱し、調理後の食品はなるべく早く食べ切りましょう。二次感染予防として、適切な食品衛生管理や、十分な手洗いを心がけましょう。

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