花粉症


第4回目は花粉症です。
 
  花粉症とは花粉が原因で起こるアレルギーで、日本ではスギ花粉症の患者さんが
1300万人いるといわれ社会問題となっています。  
 
主な症状 ・・・ 目のかゆみ、充血、まぶたの腫れ、鼻水、鼻づまり、くしゃみ、微熱など。
鼻かぜと症状が似ていますが、花粉症では無色透明でサラサラした鼻水が続くのが特徴です。

     症状が出る時期は、花粉の飛散時期によって異なります。

 

   
 時期 2月~4月 3月~5月 6月~7月 8月~9月
花粉の種類  スギ ヒノキ   カモガヤ  ヨモギ
 
   花粉以外でもダニやカビによってアレルギー症状が起きます。この場合、季節とは関係なく症状が出ます。
 
治療
  花粉症の治療には
 
 1.  抗原(花粉)除去・回避
 2.  薬物療法
 3.  減感作療法(免疫療法ともいいます)
 4.  手術療法(レーザー手術)

などがあります。それぞれに長所・短所がありますが、抗原の除去・回避を柱に薬物療法を行うのが一般的です。
 
花粉症の治療薬
  花粉が飛散する前から、内服薬(化学伝達物質遊離抑制薬第2世代抗ヒスタミン 薬)で初期治療を始め、症状が強い時期だけ、局所に働く点鼻薬や点眼液を併用するのが基本になります。
  初期治療により、症状の発現時期を遅らせたり、症状が出ても軽くて済みます。新聞・TV・インターネットなどの花粉情報を参考にして、花粉飛散の遅くとも1~2週間前に受診して治療を始めましょう。
 
 1.   抗ヒスタミン薬[内服・点眼・点鼻]
 ① アレルギーを起こすヒスタミンという物質のはたらきをおさえる薬です。
     古くから使われている第一世代の抗ヒスタミン薬は眠気や口の渇きが見られま す。   
     自動車の運転などには注意が必要です。  
     
 ② 第二世代といわれる新しいタイプの抗ヒスタミン薬は効果が出るのに少し時間がかかりますが眠気は出にくくなっています。
     緑内障や前立腺肥大の方は、その症状が悪くなる恐れがありますので医師に伝えて下さい。
   
 2.   化学伝達物質遊離抑制薬(抗アレルギー薬) [内服・点眼・点鼻]
アレルギーに関係する科学伝達物質の放出をおさえます。
即効性に欠けるので予防薬として用いることが多く花粉の飛散時期の2~4週間前から使用すると効果的です。
    
 3.   ステロイド薬[内服・点眼・点鼻]
強力な抗アレルギー作用があります。内服薬は長期使用すると副作用がありますので、症状のひどい場合のみ使用します。
通常は点眼薬や点鼻薬を用います。局所で効くので副作用が少なく、効果も強い特徴があります。点鼻薬は鼻づまりにも効果があります。
 
薬によっては作用の仕方が少しずつ異なりますので、効き方も異なります。  
    
仕事や学業の効率を低下させたくない時は、眠気の出ない薬を処方してもらうといいでしょう。
     
 4.   血管収縮剤[点鼻薬]
鼻粘膜の血管を収縮させて充血や腫れを改善するので鼻づまりに有効で、即効性があります。
点鼻薬として使用しますが、連用するとかえって鼻づまりがひどくなりますのでひどい鼻詰まりの時に応急的に使用します。
市販薬にも含まれていることがあるので連続使用時には注意しましょう。
通常2才未満の幼児には副作用があるため使えません。  
 
 5.   抗コリン薬[点鼻薬]
自律神経を抑えて鼻汁を減らします。
即効性がありますが、持続時間が短いので1日3回~4回の使用が必要です。
くしゃみ、鼻水には効果がありません。
緑内障・前立腺肥大症がある場合は使えないことがあります。
 
 6.   その他[内服薬]
    ・漢方薬                                                  症状を抑えたり、体質改善を目的に使われます。
    ・Th2サイトカイン阻害薬                        :   アレルギーに関係する物質の産生をおさえます。
    ・トロンボキサンA2拮抗薬                         アレルギーに関係する物質の作用をおさえます。
    ・ロイコトリエン拮抗薬                            :   即効性はありませんが鼻づまりに効果があります。
                                                                 くしゃみ・鼻水にもある程度効果があります。
 
  ※トロンボキサンA2拮抗薬のラマトロバンを服用中は出血が止まりにくくなることがあるので歯科受診、外科処置の際は主治医への相談が必要です。  

表I:主な治療薬の特徴
 
薬の種類 使われる時期・症状 効果が現れるまでの時間
抗ヒスタミン薬(内服) くしゃみ・鼻水 第一世代;10分~20分
    第二世代;1~2日
化学伝達物質遊離抑制薬 初期症状の弱いとき 約2週間
ステロイド薬(点鼻) 症状が強いとき 1~3日
血管収縮剤(点鼻) 鼻づまり 数分
Th2サイトカイン阻害薬 くしゃみ・鼻水 1~2週間
トロンボキサンA2拮抗薬 鼻づまり 1~4週間
ロイコトリエン拮抗薬 鼻づまり 1~2週間
 
減感作業療法(免疫療法)とは
アレルゲンに過敏になった体質を減らす治療法で、長期的な治療効果が期待できますが、即効性はありません。有効性
は60~70%です。
週1~2回原因となる花粉エキスを少しずつ濃度を上げながら注射して維持量に達したら以後は1ヶ月に1回注射を続け、
花粉に対する反応を弱めていく方法です。
少なくとも2年間は続けることが大事です。注射ではなく、舌の下に花粉エキスを含ませる「舌下免疫療法」も一部の施設
で行われています。  
      
   
     
セルフケアのポイント
  花粉を鼻や目の中の入れない、家の中にもちこまないことが大切です。

  ・花粉の飛散量の多い時には、できるだけ外出を減らす。
  ・マスクと眼鏡で、花粉が体内に入るのを防ぐ。
  ・帽子をかぶったり、髪をまとめたりして、髪につく花粉を減らす。
  ・服はサラサラした手触りの、花粉の付きにくい素材のものにする。
  ・家に入る前に、服や持ち物についた花粉をよく払い落とす。
  ・コートや帽子、マフラーは玄関で脱ぎ、室内に花粉を持ち込まない。
  ・帰宅したら、うがい、洗顔、鼻をかむなどして、体についた花粉を落とす。
洗濯物を外に干さない。
  ・掃除を励行する。

表II:症状のタイプと重症度による治療法の選択

重症度 軽症 中等症 重症
病型   くしゃみ
鼻漏型
鼻閉 くしゃみ 
鼻漏型
鼻閉型
治療 第2世代抗ヒスタミン薬または遊離抑制薬 ①第2世代抗ヒスタミン薬
②遊離抑制薬 
③局所ステロイド薬
①ロイコトリエン拮抗薬
②トロンボキサン
A2拮抗薬
③局所ステロイド薬
局所ステロイド薬+
第二世代抗ヒスタミン薬
局所ステロイド薬+
ロイコトリエン拮抗薬 
または
トロンボキサン
A2拮抗薬

必要に応じて点鼻用血管収縮薬を治療開始の5~7日間に限って用いる

①,②,③のいずれか一つ
必要に応じて①または②に③を併用する

    鼻閉型で鼻腔形態異常を伴う症例では
手術
    特異的免疫療法
  アレルゲン除去・回避
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