認知症は、誰にでも起こる可能性のある脳の病気です。
認知症は、いろいろな原因で脳の細胞が死んでしまったり、働きが悪くなった
ためにさまざまな障害が起こり,生活に支障をきたす状態です。
高齢化に伴って、認知症高齢者は今後ますます増加すると予想されています。
認知症には主に3つのタイプがあります。
アルツハイマー病 (全体の約5割)
原因は不明ですが、脳の神経細胞が小さくなり、やがてどんどん減っていくことによって起こります。
脳血管性認知症 (全体の約2割)
脳の血管が詰まったり破れたりすることによって、その部分の脳の働きが悪くなり、起こります。
レビー小体型認知症(全体の約2割)
脳の神経細胞の中に、ある種のたんぱく質が現れることによって起こります。
その他、頭部のケガや病気などさまざまな原因で発症します。
認知症には、認知症の中心となる症状の「中核症状」と、本人の性格、環境、人間関係など様々な要因がからみあってあらわれる「周辺症状」があります。
● 中核症状
必ずみられる症状で、だんだん進行していきます
記憶障害
・老化による物忘れと違い、体験の全体を忘れる。
・同じことを繰り返す。
見当識障害
・時間や季節感の感覚が薄れる。
・近所で迷子になる。
・自宅のお手洗い等の場所が分からなくなる。
・自分の年齢や人間関係が分からなくなる。
理解・判断力の低下
・考えるスピードが遅くなる。
・2つ以上のことが重なるとうまく処理できなくなる。
・手順良く計画的に行動できなくなる。
実行機能障害
・計画を立てて実行することができない。
・電気製品や銀行のATM等がうまく使えなくなる。
● 周辺症状
人により症状のには異が大きく、病気の期間や生活状況により症状はかわります。最近では「認知症に伴う行動・心理学的症候(BPSD)」とよばれ、精神症状と行動障害にわけられます。
・妄 想 ・幻 覚
・徘 徊 ・人格変化
・暴力行為 ・異食・過食
・う つ ・睡眠障害 etc…
周辺症状は認知症の人の不安な気持ちや焦り、いらだちなどを早い段階で受け止めて、環境を整えたり適切な対応を行うことで、未然に防いだり改善できることも少なくありません。そのためにはご家族、介護者が気持ちのゆとりを持って認知症の人に向き合う環境づくりも大切です。
~老化による「もの忘れ」と認知症による「記憶障害」との違い~
老化による「もの忘れ」
体験の一部を忘れる。 (例)朝ごはんに食べた物を忘れている。
もの忘れを自覚している。 ※朝ごはんを食べたことは覚えている。
認知症による「記憶障害」
体験そのものを忘れる。 (例)朝ごはんを食べたことを忘れている。
もの忘れを自覚していない。
生活習慣病を予防することが、認知症予防にもつながります。
運動をしましょう。
・ウォーキングや体操などの有酸素運動をしましょう。
食生活に気をつけましょう。
・塩分を控えめに、バランスのよい食事を心がけましょう。
・青魚や野菜、果物をたくさん食べましょう。
脳を活発に動かしましょう。
・ニュースや新聞等を見て、情報に敏感になりましょう。
・趣味に取り組んだり、おしゃれをしたり、好奇心と行動力を持ちましょう。
・家族や友人とのおしゃべりを楽しみましょう。
今までの自分でなくなっていくことに不安や悲しみを一番感じているのは本人です。
本人の気持ちになって考えましょう。
尊厳を大事にした対応をしましょう。
・認知症になっても、感情やその人らしさは保たれています。
・認知症の方は不安や苦しみを抱えており、そのために行動障害が起こります。
その気持ちを理解し、その人の心に寄り添うような対応をしましょう。
ゆっくり、わかりやすい言葉で話しましょう。
・認知症の方に一度にたくさんのことを話しかけると混乱してしまいます。
ゆっくり分かりやすい言葉で話しかけましょう。
できることのお手伝いをしましょう。
・認知症になっても、すべてのことができなくなるわけではありません。
本人ができることを生かしながらお手伝いをしましょう。
認知症は
・病歴を聞く
・認知機能検査 (長谷川式認知症スケールなど)
・画像診断 (CT・MRIやSPECT・PETといわれる検査 )
・一般検査 などを行った上で診断されます。
認知症の中には、治療すると治るものもあります。
また、早期に治療やケアをすれば、症状を和らげたり、薬により
進行を遅らせたりすることもできます。
現在の医学では認知症を“治癒”させる治療はありません。しかし、非薬物療法や抗認知症薬により認知症の進行を抑制させることができます。また介護上問題となる周辺症状についても非薬物療法・薬物療法にて改善が見込まれます。
<中核症状の治療>
アルツハイマー病に代表される認知症の大部分は進行性で、現在の医学では治癒させることはできないが、早い時期からの適切な介入や治療により、症状の進行を抑制させることができるとされています。
●非薬物療法
認知症の多くが自発性が低下して、それに伴い、日常生活の活動性が低下します。刺激の不足や社会的交流の低下は結果として認知機能の低下を早める要因となるので、適切な関わり・介入により患者の活動のレベルを維持することが重要です。
●薬物療法
抗認知症薬
アルツハイマー病では脳での情報伝達物質であるアセチルコリンの低下がみられるとされていて、現在コリンエステラーゼ阻害薬という種類の薬が治療に用いられています。
(商品名でアリセプト、レミニール、リバスタッチパッチなど)
また、脳神経のなかで、コリンエステラーゼ阻害薬とは作用する部分が異なる、NMDA受容体拮抗薬という種類の薬も最近治療に用いられるようになりました。
(商品名 メマリー)
いずれの薬剤も、アルツハイマー病での細胞変性、神経脱落を治療するものではありません。
効果は症状進行の抑制で、症状の悪化を先送りすることです。
脳梗塞再発予防薬
血管性認知症では、血管障害イベントの再発抑制が最も重要です。血管障害の要因である高血圧、糖尿病、高脂血症、不整脈等を十分に管理することが何より重要です。
抗凝固薬・抗血小板薬・脳循環改善薬を用いることで脳梗塞の再発抑制を行います。脳循環改善薬の中には意欲低下を改善させうるものもあり、血管障害後の抑うつや自発性低下などにも有効とされています。
<周辺症状の治療>
認知症の治療・介護において、周辺症状が問題となりますが、治療については非薬物療法を優先させることが重要です。周辺症状の多くは介護現場や介護者とのやりとりの中で認められることが多く、介護・ケア・対応の方法の工夫や、心理教育を通じて介護者の病気への理解や・受け入れをすすめることが有効な場合が多いです。
また、介護保険で行われているデイケア・デイサービス、訪問介護などの利用が症状の進行を抑制したり、自発性の低下や抑うつ・妄想の改善に効果があるとされています。
介護者の負担軽減にも有効で、積極的な利用がすすめられます。
非薬物療法で改善が認められない場合や、介護上問題が大きい場合には、薬物療法の対象となり、向精神薬、抗うつ薬 、抗不安薬、睡眠薬などが投与されます。
気になることがあったら、まずは身近な相談窓口、またはかかりつけ医に相談しましょう。