ウエストナイル熱/ウエストナイル脳炎
ウエストナイルウイルスは、フラビウイルス科フラビウイルス属に属する。日本脳炎ウイルスやセントルイス脳炎ウイルスに近い。鳥類(野生と飼育の両方)に感染するが時に哺乳類にも感染し、ウマ科では時に脳炎をおこす。ヒトでも発病する。
鳥がウエストナイルウイルスに感染して発病したり、死んだという報告は過去には少なかった。
潜伏期間;3-15日
(WNVの混入した血液を輸血された患者が、輸血に2日後に発病した症例がCDCから報告されている)
臨床症状:多くは不顕性感染におわるが発症した場合以下のような病態となる。
通常型は急激な熱性疾患として発症し、頭痛、背部痛、めまい、発汗、時に猩紅熱様発疹(約半数の症例で認められる)、リンパ節腫大、口狭炎を合併する。患者は第3-7病日に解熱し、短期間に回復する。発熱は二峰性を示すこともある。
脳炎型は重篤で高齢者によくみられる。中央アフリカでは劇症肝炎を併発した症例が報告されている、また心筋炎や膵炎を併発した例もある。
臨床検査所見は、白血球減少、脳炎患者の髄液では細胞層化とタンパク上昇が認めれれる。
治療法は、対症療法である。ウイルスは発症初期の血液から分離されることが多い。
実験室内診断:
患者の急性期の血清からウイルスを分離するか、RT-PCR法によりウイルス遺伝子(RNA)を検出する。確定診断のためには、血清診断よりも信頼性が高い。
IgG抗体は日本脳炎ウイルス等他のフラビウイルスに対して交叉反応を示すので注意を要する。IgM捕捉ELISA法により特異的IgM抗体を検出することにより診断できる。ただし、日本脳炎と西ナイルウイルスは極めて近い抗原性を示すため、症例によっては中和抗体価で判定する必要が生じる場合が予想される。しかし、中和抗体による場合診断にやや時間
がかかる。
主としてCulex(イエカ)の吸血によって感染し、アフリカ(ウガンダ、コンゴ、中央アフリカ、マダガスカル、ケニア、エジプト)、地中海沿岸(フランスのカマルグ地方)、インド西部のきわめて広い地域に分布している。Culex(イエカ)のなかでもアフリカや中東においてはCulex pipiens molestusが、アジアにおいては、コガタアカイエカ、アカイエカなどが主要な媒介蚊であるが、ヤブカ属も媒介可能である。
感染環:ウエストナイルウイルスは蚊-トリのサイクルで維持されている。トリ以外の中間宿主としてはコウモリも考えられている。ダニにも感染するがダニが媒介するという確証はない。
発生時期:温帯地域では、西ナイル熱・脳炎が発生するのは夏の後半から初秋にかけてである。
遺伝子的に極めて類似したKunjinウイルスはオーストラリアに分布しており、ときにヒトで脳炎をおこす。West Nileウイルスと同じく、馬では致死的な脳炎をおこす。
近年の流行:今回のニューヨークにおける流行以前にも、1994年アルジェリア、1996年ルーマニアにおいて流行した。