先天性魚鱗癬様紅皮症

先天性魚鱗癬様紅皮症とは

せんてんせいぎょりんせんようこうひしょう

全身の皮膚が赤くなり、魚のうろこ状やさめ肌状になる生まれつき(遺伝性)の病気です。うろこのようになった皮膚の状態を鱗屑(りんせつ)といいます。水ぶくれ(水疱)ができる水疱型先天性魚鱗癬様紅皮症(表皮融解性魚鱗癬)、水ぶくれがみられない非水疱型先天性魚鱗癬様紅皮症(先天性魚鱗癬様紅皮症)、赤みがなく大型の鱗屑が特徴的な葉状(ようじょう)魚鱗癬、著しく厚く固い鱗屑をもち最も症状の重い道化師様魚鱗癬、皮膚以外にも色々な症状があらわれる魚鱗癬症候群に分けられます。

この病気の原因は?

皮膚は表皮、真皮、皮下組織の3層からなります。表皮は最も外側にあり、正常な状態では細菌やウイルス、その他の異物が体内に侵入するのを防ぎ、体から水分が蒸発しないようにしています。最近の科学の進歩により、多くの病気の原因が分かってきましたが、先天性魚鱗癬様紅皮症でも、ある特定の遺伝子の異常(変異)が明らかにされてきました(表)。これらの遺伝子の異常により表皮の正常な状態が損なわれ、病気になると考えられています。

どのような症状がおきる?

多くの場合、生まれたときから全身の皮膚が赤くなり、魚のうろこ状やさめ肌状(鱗屑)になります。非水疱型先天性魚鱗癬様紅皮症や葉状魚鱗癬の赤ちゃんは半透明で光沢のある薄い膜に包まれて生まれてくるのでコロジオン児と呼ばれます。水疱型先天性魚鱗癬様紅皮症では、水ぶくれ(水疱)やあかむけ(びらん)がみられます。非水疱型魚鱗癬様紅皮症や道化師様魚鱗癬ではまぶたやくちびるがそり返り、耳が変形したり、手のひらや足のうらの皮膚がとても厚くなったりします。道化師様魚鱗癬は特に重症であり、よろい状の固くて厚い鱗屑が全身にみられ、細菌やウイルスに感染したり水分が蒸散しすぎたりして、赤ちゃんの時期に亡くなることもあります。魚鱗癬症候群では皮膚症状にくわえて、様々な臓器の症状が合併します。

治療法は?

特効的な治療法はなく、症状をやわらげる治療を行います。ぬり薬としてサリチル酸ワセリンや尿素剤などの角質をとかす薬または保湿剤を使ったり、活性型ビタミンD3軟膏を使ったりします。サリチル酸ワセリンや尿素剤には刺激感がみられることがあります。サリチル酸ワセリンの使用量が多くなると中毒症状(発熱、吐き気、錯乱、脱水など)が出ることがあります。また、活性型ビタミンD3軟膏をたくさん使用すると血液の中のカルシウム濃度が上がるので注意が必要です。飲み薬としてビタミンA誘導体(レチノイド)を使ったりすることがありますが、小児における成長障害やくちびるの荒れなどの副作用に注意が必要です。また、精子や卵子の形成に影響を及ぼすことが知られていますので、男女ともに内服をやめた後に一定期間の避妊が求められます。幼い時期には点滴による脱水症状の防止、体温の管理、皮膚の細菌やウイルス感染の治療などが必要になることもあります。手のひらや足の裏の皮膚が厚くなり、手足の変形が強くなると、日常生活や歩行に障害、姿勢の異常などが出て、身長が伸びにくかったり、体重が増えにくかったりします。その場合は栄養剤などの補給が必要になることもあります。
 現在のところ、終生その症状が続くことがほとんどです。重症例では感染症などの合併症により死亡することがあります。

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