潰瘍性大腸炎とは

 

潰瘍性大腸炎とは、何らかの原因により、大腸の粘膜に炎症が起こり、びらん(ただれ)や潰瘍ができる病気です。
炎症は通常、肛門に近い直腸から始まり、その後、その奥の結腸に向かって炎症が拡がっていくと考えられています。腸に起こる炎症のために、下痢や粘血便(血液・粘液・膿の混じった軟便)、発熱や体重減少などの症状があらわれます。病状は、おさまったり(寛解期)、悪化したり(活動期)を繰り返すことが多く、長期にわたって、この病気とつきあっていくこともあります。

 

発症の原因

 

潰瘍性大腸炎は、厚生労働省の特定疾患調査研究班により病気の研究が進められていますが、なぜ病気が起こるのか今だに原因がはっきりと分かっていません。
最近の有力な説として、自己免疫機序など免疫異常がその原因となっているのではないかと考えられています。
人間の身体には、免疫機能が備わっています。腸管にもこの免疫機能がはたらいていますが、この免疫機能に異常が生じると自分自身の粘膜をも異物とみなし、これを攻撃して傷つけようとしてしまいその結果、粘膜に炎症が起こります。異物を排除するために異常にはたらく免疫機能が活発化すると、白血球が過剰にはたらき、本来ならば異物を処理するための物質を放出しつづけるため、持続する炎症が起こるのです。
ただ、この免疫説も決定的ではなく、炎症が起こるしくみとしては有力な説ですが、なぜ免疫機能の異常が起こるのか潰瘍性大腸炎の発症のメカニズムは、まだ明確には分かっていません。

患者数と発症年齢

潰瘍性大腸炎は、原因が不明なため根本治療が確立されていませんが、最近の治療法の進歩により、多くの方が通常の日常生活を送れるようになってきました。

以前はとてもめずらしい病気で、患者さんの数もごくわずかでした。しかし、その後患者数は増え、平成20年には10万人を超えています。(厚生労働省調べ)
患者さんの発症率に性別の差はなく、ほぼ1:1の割合です。発症年齢もあらゆる年代に分布していますが、30歳代をピークに20~50歳代に多く分布しています。 

病変の範囲


潰瘍性大腸炎は大腸の粘膜に広く浅く炎症が生じ、びらんや潰瘍ができる病気です。
肛門に近い結腸は、ほとんどの患者さんで炎症がS状結腸→下行結腸→横行結腸→上行結腸、のように上行性に炎症が拡がっていくことがあり、炎症がびまん性に見られるのを特徴とします。
大腸は内側から粘膜層、粘膜下層、筋層、漿膜から成り立っています。潰瘍性大腸炎は、このうちの粘膜層、粘膜下層を中心に炎症が生じ、重篤になると潰瘍が筋層に達することもあります。

合併症

潰瘍性大腸炎を発症すると、下痢や腹痛、粘血便などの大腸の局所症状に、発熱や吐気・嘔吐、頻脈、貧血などの全身症状が起こる場合もあります。
さらに、さまざまな合併症もみられます。
潰瘍性大腸炎の合併症には、腸管に起こる腸管合併症と腸管以外の部分に起こる腸管外合併症があります。

腸管合併症
大腸からの大出血、穿孔、中毒性巨大結腸症などがあり、病状がきわめて重篤な場合に起こりますが、めったにみられません。

腸管外合併症
結節性紅斑、壊疽性膿皮症などの皮膚症状、結膜炎や虹彩炎などの眼症状、関節痛、関節炎などがあります。ほかにも、口内炎、膵炎、肝機能障害、肺機能障害などが起こることがあります。


潰瘍性大腸炎は、難病のひとつに指定されています。

潰瘍性大腸炎と診断された場合、保健所で決められた手続きをとると、特定疾患医療給付制度が適応され、医療費の援助を受けることができます。

申請方法については、患者さんの住所地を所管する保健所にご相談ください。


治療法

 


潰瘍性大腸炎は、病期・病変の範囲・重症度・合併症など、さまざまな状況を十分に把握し、総合的に病気の状態を判断した上で、治療方針が決められます。

薬物療法

潰瘍性大腸炎は、発症の原因がはっきりと分かっていないため、病気を根本から治すというのではなく、大腸の炎症を抑えて、下痢や粘血便などの症状を緩和していき、炎症のない状態である寛解期を長く維持することが、治療目標となります。

潰瘍性大腸炎の内科的治療には主に以下のものがあります。


〈5-アミノサリチル酸薬(5-ASA)製薬〉

5-ASA製薬には従来からのサラゾスルファピリジン(サラゾピリン)と、その副作用を軽減するために開発された改良新薬のメサラジン(ペンタサやアサコール)があります。経口や直腸から投与され、持続する炎症を抑えます。炎症を抑えることで、下痢、下血、腹痛などの症状は著しく減少します。軽症から中等症の潰瘍性大腸炎に有効で、再燃予防にも効果があります。


〈副腎皮質ステロイド薬〉

代表的な薬剤としてプレドニゾロンがあります。経口や直腸からあるいは経静脈的に投与されます。この薬剤は中等症から重症の患者さんに用いられ、強力に炎症を抑えますが、再燃を予防する効果は認められていません。

〈血球成分除去療法〉

薬物療法ではありませんが、血液中から異常に活性化した白血球を取り除く治療法で、LCAP(白血球除去療法:セルソーバ)、GCAP(顆粒球除去療法:アダカラム)があります。副腎皮質ステロイド薬で効果が得られない患者さんの活動期の治療に用いられます。


〈免疫調節薬〉

これらの薬剤には、アザチオプリン(イムラン)や6-メルカプトプリン(ロイケリン)、最近ではシクロスポリン(サンディミュン)やタクロリムス(プログラフ)があります。これらの薬剤はステロイド薬の無効の患者さんや、ステロイド薬が中止できない患者さんの治療に用いられます。

<抗TNFα受容体拮抗薬>

インフリキシマブ(レミケード)は、クローン病や関節リウマチの患者さんでも使用されている注射薬ですが、潰瘍性大腸炎でも効果が期待できる薬剤です。効果がある場合、多くの患者さんで、8週おきに投与が継続され、再燃予防効果が期待されます。潰瘍性大腸炎の多くは薬物治療でコントロールできますが、下記のようなケースでは手術の対象となることがあります。


外科的治療

(1)大量出血がみられる場

(2)中毒性巨大結腸症(大腸が腫れ上がり、毒素が全身に回ってしまう)
(3)穿孔(大腸が破れる)
(4)癌化またはその疑い
(5)内科的治療に反応しない重症例
(6)副作用のためステロイドなどの薬剤を使用できない場合

手術は大腸の全摘が基本となります。以前は人工肛門を設置する手術が行われていましたが、現在では肛門を温存する手術が主流です。この手術は大腸を取り除いた後、小腸で便を貯める袋を作って肛門につなぐ方法です。この手術方法で患者さんのQOLは飛躍的に向上されています。

潰瘍性大腸炎は、症状のない寛解期も含めて日常生活については、気を配ることも必要でしょう。しかし、あまりに神経質になりすぎて、必要以上に制限をしてしまうことも避けるべきです。大切なのは、「~過ぎないこと」。がんばりすぎたり、無理しすぎたりは禁物です。日常生活のポイントを上手におさえて、できるだけ快適な毎日を送っていくことが大切です。

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