レジオネラ症(在郷軍人病)

 

病態と診断
 


A、病態

レジオネラ症は4類感染症であり、直ちに保健所に届け出る義務がある。肺炎とポンティアック熱(インフルエンザ様の発熱疾患)の臨床病型に分けられるが、特に肺炎は、急激に進展する致死的肺炎として知られている。
わが国では市中肺炎の約3%を占め、ときに集団発生や院内肺炎としてみられる。レジオネラ属菌は土壌や河川などの環境中に分布するが、菌が循環式浴槽水・温泉水、給湯水などに侵入し、このエアロゾルを吸入することで感染が起こる。病原性が最も強いのはLegionella pneumophilaであり、レジオネラ肺炎全体の60-70%を占めるが、そのなかでも血清型1が多い。
潜伏期間は2-10日であり、高熱や全身倦怠感などの非特異的症状から始まり、遅れて呼吸器症状(咳、痰、呼吸困難など)が出現する。
中枢神経症状(頭痛、意識障害、逆行性健忘症など)や消化器症状(下痢、腹痛など)を伴う場合も多い。糖尿病、慢性呼吸器疾患などの基礎疾患にもつ患者は重症化しやすい。
 

B、診断

温泉歴などがある場合や、急速進行性でβラクタム系薬が無効な肺炎において本症を疑う。胸部画像所見は多彩な陰影を呈し、特異的な所見はない。著名な炎症所見、肝・筋酵素の上昇、低Na血症などがみられる。塗抹検査では特殊染色(ヒメレス染色など)が必要で、診断には特殊培地(BCYEa培地など)での培養や尿中抗原、特異的DNA、血清抗体価などの検査が用いられる。特に尿中抗原検査は迅速診断が可能なため有用であるが、血清型1以外の血清型には感度が低い。
 

治療方針

レジオネラ属菌は細胞内増殖能を有しているため、細胞内移行が良好なニューキノロン系薬やマクロライド系薬を用いる。レジオネラ肺炎は重症化する傾向が強く、入院のうえ、十分量の静注薬を使用することが原則である。特にニューキノロン系薬は抗菌力に優れ、殺菌的に作用するため、レジオネラ肺炎治療の第1選択薬となる。治療薬は3週間程度を目安に使用する。

A、軽症の場合
処方例 下記のいずれかを用いるが、併用も可である。
1)グレースビット錠(50mg)2錠分2(効果不十分の場合4錠分2に増量)またはジェニナック錠(200mg)2錠分12)クラリス錠またはクラリシッド錠(200mg)2錠分1、またはジスロマック錠(250mg)2錠分1 3日間、またはジスロマックSR成人用ドライシロップ(2g)1回2g分1 空腹時ジスロマックは保外(菌種)、ただし肺炎での適用はある。

B、中等症以上の場合
処方例 下記のいずれかを用いる。1)が第1選択であるが、重症例ではこれらを併用する。全身状態が改善したら経口薬に変更可能。
1)クラビット注1回500mg1日1回点滴静注、またはシプロキサン注1回300mg1日2回点滴静注2)エリスロシン注1回500mg1日3回点滴静注 保外
3)リファジンカプセル(150mg)3カプセル分1 保外リファンピシンは原則として朝食前空腹時投与であり、単独では使用しない。また、抗結核薬としての重要性から可能な限り一般感染症に使用しない。
 

患者説明のポイント
・集団発生の可能性もあり、患者周囲に同様な症状を示すものがいないかを確認する。
・重症化しやすく、予後不良の場合があることを伝える。
 

看護・介護のポイント
・可能な限り感染経路を追求する。特に院内発症の場合には早急に感染拡大防止対策を立てる必要がある。
・ヒトからヒトへの感染はないので、飛沫感染、空気感染対策の必要はない。

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