高血圧

 
第2回目は高血圧です。
 
<高血圧とは>
 
血圧    : 動脈の血管壁にかかる圧力をさし具体的には上腕の動脈で測定された値を指標にします。
高血圧  :  上の血圧(収縮期血圧)下の血圧(拡張期血圧)のどちらか、又は両方が定められた基準よりも高く慢性的に続く状態を言います。
 
<高血圧の分類>
 
高血圧は原因となる病気があり、はっきりしている二次性高血圧と原因がはっきりしない本態性高血圧に分類されます。
二次性高血圧であるかどうか(原因となる病気があるかどうか)を調べて、そうでない場合、本態性高血圧と診断されます。
 
更に、高血圧は 右の分類図から
分類 収縮期血圧
(mmHg)
  拡張期血圧
(mmHg)
正常高値血圧 130~139 または 85~89
   軽症高血圧 軽症高血圧 140~159 または または 90~99
   中~重症高血圧 中等高血圧 160~170 または または 100~109
   収縮期高血圧#33cc66 重症高血圧 ≧180 または または ≧110
に分類されます。 収縮期高血圧 ≧140 かつ <90
 
<高血圧になるしくみ>
 
  ①心拍出量の増加;心臓が体に送り出す血液が増加する
  ②抹消血管抵抗の増加;動脈硬化などで血管の抵抗が増加する
  ③循環血液の増加;食塩の摂り過ぎなどにより、体の中に水分がたまり、全体の血液が増加する(むくみ)
 
  これら①~③が遺伝、年齢、又、生活環境(肥満、運動不足、喫煙、ストレス等)によ   って増加し高血圧につながります。
 
<気をつけたい合併症>
    血圧が高くても、本人にはこれといった自覚症状がありません。
    しかし、高血圧治療の目的は血圧を下げることで重大な合併症である脳卒中や心筋梗塞、腎不全などの発症を防止することになります。
   
脳卒中
   脳梗塞     ・・・    脳の血管がつまり、そこから先の脳細胞に酸素や栄養が行かない状態

    脳出血     ・・・    もろくなった血管に高血圧などで高い圧力がかかり脳内出血がおこった状態
  
心臓病 
   狭心症・心筋梗塞    ・・・    狭心症は心筋が虚血状態になっている状態で、心筋梗塞は狭心症が進行し心筋の細胞が壊死している状態
    心不全                   ・・・    高血圧の状態が長く続くとそれに応じて心筋が肥大し、心臓の負担が大きくなり収縮力が低下してしまった状態
 
腎臓病
   腎不全                    ・・・    血液をろ過する働きをしている糸球体が高血圧によって血流が障害されると機能が低下し尿毒症をひきおこした状態で、最終的には透析を受けなければならなくなります。
 
 動脈瘤、壊疽、糖尿病   など
 
<高血圧の治療>
二次性高血圧の様に原因がはっきりしている高血圧については原因をなる病気を治療することになり、以下の方法とは治療が異なりますのでここでは省略させて頂きます。
 
本態性高血圧には、生活環境が大きく関わっているため、次の1~3のライフスタイルの修正が高血圧治療の要と言えます。
 
   1.  食事療法  BMI=体重(kg)/身長(㎡)   
        BMI (Body mass index)と呼びます
 
       BMIが30になると様々な病気の危険因子がぐんと増えるので、BMIを22として計算した標準体重になる様に肥満を是正する必要があります。

   2.  標準体重(kg)=身長(m)×身長(m)×22(BMI)
       食塩の制限: 一般の人で1日10g以下 高血圧の人で1日6gを目標にします。
           ただし無理な減塩は長続きしないので自分のできるところから始めて長続きさせましょう。
           アルコールは適量に。
           カリウム、カルシウム、マグネシウム 等 ミネラルの摂取を心がけます。
 
   3.   運動療法
           早歩き、ジョギング、水泳などの軽めの全身運動で30~45分、週に3~5回程度行うのが良いとされています。
           運動療法には、食事療法の効果を上げる体内の降圧物質を増加させるストレス、喫煙の害を減らす等のメリットがあります
 
           食事療法と運動療法は持続しないと効果がありません。
           あくまでも無理のない程度で始めましょう。
 
   4.   生活療法
           禁煙を行う
           入浴は長湯や熱いお湯をさける
           便秘の解消につとめる
           睡眠不足に気をつける
           ストレス解消法を見つける
 
   5.   薬物療法
            代表的な治療薬は下の表5種類です。
            どれも血圧を下げるので、低血圧やめまいには注意が必要です

薬の種類 働き
注意して
ほしい事項
Ca拮抗薬 血管の収縮はCaイオンが血管壁の細胞内へ流入することでおこります。細胞内にCaイオンが入るのを抑えることで血圧を下げます。 動悸、ほてり、頭痛、歯肉増生などに注意。グレープフルーツジュースを一緒に飲むと血圧が下がりすぎることがあります。
利尿薬 Naと水分の排泄を促すことで、血圧を下げます。Kの排出も促して利尿をすすめるタイプの薬と、体の中にKを保持して利尿をすすめるタイプの薬があります。食塩摂取量の多い患者さんに特に有用です。
血糖値や尿酸値の上昇に注意。
Kを排出するタイプの薬は低K血症に注意
ACE-I
(アンジオテンシン変換酵素阻害薬)
血圧を一定に保つレニンーアンジオテンシン系というシステムのうち、アンジンテンシンⅡという物質の産生を抑えることで血圧を下げます。心臓、腎臓などの臓器保護作用もあります。
頭痛 発疹 空咳に注意
妊婦さんには使えませんが糖尿病や痛風、心不全など合併症のある患者さんによく使われます。
ARB
(アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬)
アンジオテンシンⅡが作用する部位に、かわりに結合することでアンジオテンシンⅡの血圧を上げる働きを抑え血圧を下げます。 妊婦や重症の肝障害の患者さんには使えませんが、ACE-I に比べて空咳などの副作用は少ないです。
β-遮断薬 心臓の働きを抑えることで体内を循環する血液を減らし、血圧を下げます。心臓への負担が軽くなるため狭心症や心筋梗塞後の人によく使われます。 徐脈やぜん息に注意が必要です。ぜん息、房室ブロックのの患者さんには使えません。本薬を突然中止するのはやめて下さい。
 
他にも使用される薬はありますが、上記のような薬を症状、年齢、合併症によって1~複数組み合わせて用います。
大部分の患者さんが2剤以上の併用が必要です。
降圧薬の副作用は比較的少ないですが、人によっては副作用が現れることがあります。
服用を急に中止するとリバウンド現象で急に血圧が上がるなど危険なので勝手に中止せず必ず医師に相談してください。
 
余談
近年、仮面血圧性という言葉がよく使われます。
これは、診察室ではでは薬の効果で血圧が安定しているが、薬を服用する直前の時間帯には、高血圧の値を示している患者さんをいいます。
そのため、24時間の血圧測定や、家庭での血圧測定が重要になってきます。
以下に家庭での血圧の測り方のポイントを示しますので、参考になさって下さい。
 
家庭での血圧の測り方
①静かで暖かい部屋で測る(室温24℃くらい)
②測定前には5分以上安静な状態を保つ
③座った状態で測る(駆血帯は心臓の高さに保つ)
④測定直前 および測定中の喫煙、飲食、会話、運動などは避ける
⑤連続に3回測り最も低い値 又は2回測定し5mmHg以上の差がなければ平均値をとる(どちらかの方法で継続)
⑥毎日一定の時間帯に測定する
⑦脈拍数も同時に記録する
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