網膜は目の奥・眼底にある組織です。そこには視細胞と呼ばれる光を感じる細胞があり、ここで受けとられた映像は電気信号に変換されて、視神経を通じ脳に送られ認識されます。このように網膜は、カメラでいえばフィルムにあたり、ものを見るために大変重要な働きを担ってます。
網膜が剥がれる「網膜剥離」が起こると、見える範囲(視野)の一部が欠け、大変見えにくくなります。
●裂孔原性網膜剥離
近視が強い人は、網膜剥離を起こしやすい傾向にあります。また年代別では20歳代と、50歳代以降に多いことがわかっています。中高年の人では、加齢により硝子体(しょうしたい)が変化して起こるのものが多く、網膜に孔(あな)が空くため、裂孔原性(れっこうげんせい)網膜剥離と呼ばれます。
網膜に裂け目ができる原因としては、近視などによる網膜の萎縮、硝子体の変化、打撲などがありま
す。
●その他の網膜剥離
糖尿病網膜症では、出血しやすい血管を含んだ膜が網膜の上にできます。この膜が収縮して網膜を引っ張ると、網膜が剥離してしまいます(牽引性網膜剥離けんいんせいもうまくはくり)。
ぶどう膜に炎症があったり、眼内腫瘍などがあると、網膜血管や脈絡膜から血液中の水分が滲み出し、網膜下にたまって網膜が剥離することがあります(続発性網膜剥離ぞくはつせいもうまくはくり)。
このような場合、原因となっている疾患の治療を行います。
視野に黒い影やゴミのようなものが見える飛蚊症や、稲光のようなものが見える光視症などを自覚することがあります。病状が進行すると、視野にカーテンをかぶせられたように見えにくくなる視野欠損や、視力の低下が起こります。
網膜剥離を治療するには手術が必要となります。初期の、網膜に裂け目や孔ができた段階であれば、レーザー治療で進行を抑えることができます。網膜剥離が発生してしまっている場合は、網膜復位術や硝子体手術が行われます。
〈網膜復位術〉
眼球の外側からの操作で、剥離した網膜を元の位置に戻します。
〈硝子体手術〉
目の中に細い手術器具を入れ、目の中から網膜剥離を治療します。
近視や網膜剥離の家族歴など、網膜剥離を起こす可能性のある人は、定期的な眼底検査を受けるとよいでしょう。また、飛蚊症や光視症などの症状がある場合には、早めのチェックが大切です。