心筋梗塞とは心臓の筋肉に血液を供給している冠状動脈が血栓などで詰まってしまって、心臓の筋肉の細胞が死んでいく病気です。
主な症状は突然の激烈な痛みが起こり冷や汗を伴います。この発作は少なくとも30分以上続き、安静にしていても収まりません。また、不整脈(心臓運動のリズムが乱れる病気)などの合併症にもつながります。心筋梗塞の成因を下の図で示します。
心臓の筋肉への酸素供給低下の主原因
① 冠状動脈がせまくなる:コレステロールや脂質が血管壁にへばりつくことでせまくなる
② 冠状動脈の動脈硬化;動脈が柔軟性を失うため、血管が広がるべきときに十分に広がることができないため
③ 冠状動脈の異常収縮:血管が収縮しすぎて、十分に血液が通過できないため
④ 血栓:血管が詰まってしまって、血液が通過できなくなるため
心臓の筋肉への酸素消費量増大の主原因
① 心拍数増加
② 血圧上昇
③ 心臓収縮力の使い過ぎ
④ 心臓の広がりすぎ
急性心筋梗塞は致命率が高い病気ですので、治療は一刻を争います。したがって、急性期(初期)の治療は、いかにして早く閉塞している冠動脈を再開通させ、障害が進んでいる心筋細胞を救うかがポイントとなります。
○再開通療法
心筋梗塞の発症12時間以内であれば再開通療法が有効です。血栓溶解療法とカテーテル治療がそれにあたります。
1. 血栓溶解療法
静脈内に血栓溶解剤(ウロキナーゼ、ストレプトキナーゼ、t-PAなど)を投与する方法と、カテーテルを用いて閉塞している冠動脈内に血栓溶解剤を直接投与する冠動脈内血栓溶解療法があります。
2. カテーテル治療
冠動脈造影検査と同じ方法で、細く柔軟な針金(ガイドワイヤー)を狭窄した冠動脈まで通します。そしてガイドワイヤーにそって風船のついたカテーテル(バルーンカテーテル)を狭窄部に導き、バルーンを膨らませて狭窄部を押し広げます。カテーテル治療は、手術のようにメスで胸を開けることなく冠動脈の血流を再開することができるので、患者さんの負担が少なくとても有効な治療法です。ただし、この治療法にも欠点があり、拡張に成功しても2~3割の患者さんで血管が再び狭窄します。これを防ぐため、拡張した血管の内部に金属の網(ステント)を挿入する方法が現在では一般的です。
○バイパス手術(CABG)
バイパス手術は、冠動脈の閉塞部分を迂回する形で新たな血液の通り道を作る手術です。作り方は、足の静脈を利用してバイパスを作る方法と、内胸動脈などの動脈を直接つなぐ方法があります。急性心筋梗塞では、左冠動脈の付け根の完全閉塞で上記の血栓溶解療法やカテーテル治療がうまくいかなかったときに行われます。カテーテル治療が技術・道具ともに進歩しているので急性心筋梗塞の治療としてバイパス手術が選択されることは減ってきています。
○心臓リハビリテーション
CCU入院後、数日して、状態が安定した頃より心臓リハビリテーションを行います。ベッド上に座ることから始め、運動量を徐々に増やしていきます。心臓に適度な負荷をかけることにより回復を助けます。退院前に運動負荷試験を行って心機能を評価し、退院後の運動の目安を決めていきます。再発を予防するためには心臓リハビリをしっかり行なうことが大切です。
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急性期 |
慢性期 |
一般的 |
入院 |
リハビリと危険因子の改善 |
血流再開療法 |
血栓溶解療法 カテーテル治療 |
カテーテル治療 冠状動脈バイパス手術 |
薬物治療 |
注射薬が基本 ① 痛みどめ ② 抗不安薬 ③ 抗不整脈薬 ④ 抗心不全薬 |
口から飲む薬が基本 ① 血をサラサラにする薬 ② 心臓の負担を減らす薬 ③ 抗不整脈薬
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【いろいろな薬】
痛みどめ |
有名なものはモルヒネです 急性期の心筋梗塞の痛みをとり、「死」への恐怖感・不安を和らげます |
抗不安薬 |
急性期の心筋梗塞における激しい不安を抑えます |
抗心不全薬 |
心臓の働きを活発にします。 |
血をサラサラにする薬 |
心臓の血管が詰まることを防ぎます。 有名なものはワーファリンです |
心臓の負担を減らす薬 |
血圧を下げる薬などがこれにあたります。 |
抗不整脈薬 |
心臓運動のリズムを整える薬です。 |
いったん、心臓の病気になると運動制限などで、生活に支障が出てしまいます。健康なうちから心臓にやさしい生活を心がけましょう。
① バランスの良く、規則正しい食生活
塩分、脂肪分、カロリーの取りすぎに注意してください。魚類や野菜類を積極的に食べましょう。
② 適度な運動
適度な運動は肥満を予防し、心筋梗塞の引き金となる各種生活習慣病の予防になります。
有酸素運動のウォーキング、ジョギング、水泳などをお勧めします。
③ 禁煙
煙草はやめることをお勧めします。
④ お酒はたしなむ程度に
「酒は百薬の長」と言われますが、飲みすぎはかえって体に毒です。お酒が好きな方はたしなむ程度にしておきましょう
⑤ ストレスをためない
ストレスは万病のもとです。
ストレスを発散する楽しみを持ちましょう